時任可愛い
「時任ぉお!!好きだぁあああ!!!」
熱い叫びが迸しる。
俺の友人は道ならぬ恋をしている。
相手は男で、しかも恋人(の疑いが極めて濃厚な)もいる。
それでも彼は、
「好きっだぁあああ!!」
らしい。
「……屋上から叫ばないで、本人に言ったらどうっすか」
「言えねぇから叫んでるんだろうがッ!!」
照れ隠しか、真っ赤になって怒鳴る。
「今更言えっかよ!クソ恥ずかしい」
屋上から叫ぶ方が恥ずかしいと思うのは俺だけだろうか。
煙草混じりの息を吐き出す。
今の叫びは不特定多数の耳に届いただろう。
以前は仇敵である時任が好きだと中々認めず、俺達にも言おうとしなかった。
今では屋上から叫ぶくらいオープンになっている。
それでも、本人には中々素直になれず不器用な振る舞いをしては殴られる様子を一番近くで見ているのは俺達である為、この恋に協力するのも厭わないと思うまでになった。
俺達ってロミオとジュリエットみたいだよな、と、真顔で相談してくる友人が面白いからというのもある。
「公開告白?熱いなぁ大塚君」
背後から冷ややかな声を浴びせられ、一斉に振り返る。
そこには何の音も気配もなしに(ドアの開閉の音すらも!)執行部のもう一人の仇敵が姿を現していた。
「く、久保田!」
「部室にまで聞こえてきたよ」
久保田に聞こえたということは、時任にも……
「時任は寝てたけど」
大塚が目に見えて肩を落とした。
あわよくばあの愛の叫びが届いていれば、と思っていたらしい。
本当に不器用だ。
だからこそ応援したくなるのだが。
本当に?
久保田と目が合った。
思わず身が竦んだ俺の、くわえ煙草に視線が移る。
バキィ!
派手に殴り飛ばされたのは、煙草を吸っていない大塚だった。
「な、何しやがる!」
連帯責任だとか白々しい屁理屈を尤もらしく述べるだろうと思っていた。
「校務じゃないよ」
しかし久保田は何もごまかさなかった。
「ただの暴力」
俺と笹原も当然のように殴られる。
(久保田の何でもないような表情の中の瞳に見え隠れする殺意が段々と露骨なものになってきてそれはまさに命懸けであることを強く覚悟させるのだった!)
(そして久保田は俺にも気付いている)
そんなさなか、屋上の扉が音を立てて開く。
「久保ちゃん、こんなトコに居たのかよ」
ふぁあと欠伸をしながら時任が入って来た。
その寝ぼけた表情が
世界一可愛く思えるなんて
誰にも言えねぇ!!!
熱い叫びが迸しる。
俺の友人は道ならぬ恋をしている。
相手は男で、しかも恋人(の疑いが極めて濃厚な)もいる。
それでも彼は、
「好きっだぁあああ!!」
らしい。
「……屋上から叫ばないで、本人に言ったらどうっすか」
「言えねぇから叫んでるんだろうがッ!!」
照れ隠しか、真っ赤になって怒鳴る。
「今更言えっかよ!クソ恥ずかしい」
屋上から叫ぶ方が恥ずかしいと思うのは俺だけだろうか。
煙草混じりの息を吐き出す。
今の叫びは不特定多数の耳に届いただろう。
以前は仇敵である時任が好きだと中々認めず、俺達にも言おうとしなかった。
今では屋上から叫ぶくらいオープンになっている。
それでも、本人には中々素直になれず不器用な振る舞いをしては殴られる様子を一番近くで見ているのは俺達である為、この恋に協力するのも厭わないと思うまでになった。
俺達ってロミオとジュリエットみたいだよな、と、真顔で相談してくる友人が面白いからというのもある。
「公開告白?熱いなぁ大塚君」
背後から冷ややかな声を浴びせられ、一斉に振り返る。
そこには何の音も気配もなしに(ドアの開閉の音すらも!)執行部のもう一人の仇敵が姿を現していた。
「く、久保田!」
「部室にまで聞こえてきたよ」
久保田に聞こえたということは、時任にも……
「時任は寝てたけど」
大塚が目に見えて肩を落とした。
あわよくばあの愛の叫びが届いていれば、と思っていたらしい。
本当に不器用だ。
だからこそ応援したくなるのだが。
本当に?
久保田と目が合った。
思わず身が竦んだ俺の、くわえ煙草に視線が移る。
バキィ!
派手に殴り飛ばされたのは、煙草を吸っていない大塚だった。
「な、何しやがる!」
連帯責任だとか白々しい屁理屈を尤もらしく述べるだろうと思っていた。
「校務じゃないよ」
しかし久保田は何もごまかさなかった。
「ただの暴力」
俺と笹原も当然のように殴られる。
(久保田の何でもないような表情の中の瞳に見え隠れする殺意が段々と露骨なものになってきてそれはまさに命懸けであることを強く覚悟させるのだった!)
(そして久保田は俺にも気付いている)
そんなさなか、屋上の扉が音を立てて開く。
「久保ちゃん、こんなトコに居たのかよ」
ふぁあと欠伸をしながら時任が入って来た。
その寝ぼけた表情が
世界一可愛く思えるなんて
誰にも言えねぇ!!!
この記事にコメントする