久保ちゃんと口喧嘩をした。
口喧嘩っつー程じゃねぇけど、すっげーくだらねぇことで言い合いをした。
もうすっげーくだらねぇことで。
「いるわきゃねーじゃん!!」
俺は顔をしかめて思いっきり吐き捨てる。
久保ちゃんはそんな俺の様子を面白そうに眺めて、
「いやいるでしょ、サンタさん」
さっきと同じ事を言った。
「だって見たことねぇし!!」
「俺もないけど」
「なら!!」
「でも、居ると思うなぁ」
柔らかく微笑みながら、しかし頑として譲らない。
久保ちゃんがこんなに頑ななのは珍しい。
俺は馬鹿馬鹿しくなって、天井に向かって叫んだ。
「別に居ても居なくてもそんなんどーでもいいじゃん!!」
「どーでもいいなら居てもよくない?」
二の句が継げず、思いっきり久保ちゃんを睨むが、アイツはそんなのどこ吹く風だ。
久保ちゃんがサンタの存在を信じていることがムカついてしょーがなかった。
アイツのタチ悪ぃトコは、サンタがいると仮定した上で自分には来ないもんだと結論付けてるトコだ。
ロマンのないロマンチストっつーか。
……ダメだ、ムカつく。
「ときと~」
「………んあ?」
気の抜けた声で名前を呼ばれ、目を覚ます。
同じく今起きたばっかっぽい久保ちゃんがぼーっとした顔で、妙にでこぼこ膨らんだ靴下を俺の顔の前で、左右に降った。
「俺の靴下にセッタ詰め込んだのお前?」
「はぁ?知らねぇよ。他の誰かじゃね」
素っ気なく言って寝返りを打つ。
顔が見えないように。
「って言われても俺とお前しかいないじゃないこの部屋には」
「じゃあサンタなんじゃん」
「ん?」
「だってサンタは靴下にプレゼント入れて回ってんだろ?今日、クリスマスじゃん」
急に久保ちゃんは黙り込んだ。
と思ったら上から思い切りのし掛かられる。
「うぉッ!!」
毛布ごと俺を抱き締めて、
「お前ってホンット可愛いねぇ」
「……だから俺じゃねぇって言ってんじゃん」
そう言いつつも、久保ちゃんの声が嬉しそうで俺も笑ってしまう。
俺も大概ロマンチストだな。
背後から久保ちゃんが、低く囁いた。
「俺がサンタを信じてるのはね、お前に出会えたからだよ」
奇跡を信じてる。
……あいっかわらず恥ずかしい奴!!
久保ちゃんは思ってたよりもずっと幸せだったらしい。
俺様のおかげでな!!