時任可愛い
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ヒタヒタと迫る足音を背後に感じて、俺は振りかえる。

――誰もいない。

薄暗い夜道に、うらぶれたような電灯が灯ってるだけだ。

夜明けの町に俺一人がここに立っている。

ひんやりと冷たい風が静かに頬を撫でて消えていく。


誰の姿も、ない。

でも、確かに、何か、いる。

「……」

背を向けると、またねっとりと絡みつくような視線を感じて振り返りたい衝動に駆られたが、

ぐっと前を見て振り切るように走り出す。

後ろでも足音が速くなったが、全力で走ってマンションに駆け込んだ。

部屋のドアを乱暴に開いて、思いっきり閉める。

鍵を閉めてから、ずるずるとドアにそってしゃがみ込んだ。

そのままで暫く暗い中、荒い息を吐き続けて。

「……はぁ……はぁ……なんなんだよ……もぉ……」

ひりつく喉の奥から出てきたのは、情けない泣き言だった。

「久保ちゃんの……馬鹿野郎……」
























「時任さ、最近顔色悪くない?」

「わッ……なんだよ、久保ちゃん!」

見上げていた空が突然久保ちゃんの顔に覆われて、思わず驚いた声を出してしまう。

少しボーっとしていたらしい。

「巡回中も妙に上の空だったしさ。何か悩みでもあんの?」

部室の窓際で空を仰いでいた俺の体を腕で囲うようにして、久保ちゃんが立っている。

沈みかけている日のオレンジの光がその顔に濃い陰影をつけていて、妙に男前に見えた。

「なんでもねーよ。気のせいじゃね」

ホントは上の空なコトも、元気がないのも自覚していたけど、言いたくなかったから強がって誤魔化す。

久保ちゃんは声音に少しの心配を滲ませて、

「ホントに?」

なんて言って、更に顔を近づけてきた。

ぐっと縮まる久保ちゃんとの距離。

……後ろは窓だし、顔を逸らす余地がない。

それに、逸らす理由もない。

そのまま睨めっこしてるみたいに細い目を見上げ続けていると、

久保ちゃんは何故か苦笑とも自嘲ともとれない複雑そうな笑みを口の端に浮かべて、体を離した。

……最近、久保ちゃんはことあるごとに顔を近づけて、じっと目を見て、それを繰り返している。

何か言いたげでもあるし……俺よりよっぽどアイツのが悩みあるっぽい。

「ハイハイ。イチャついでないで手伝ってよ」

桂木が呆れたような顔を書類から上げて、コッチを振りかえった。

「文化祭まで一週間とちょっとしかないんだからね。まったく。なーんで本部の仕事を手伝わなきゃなんないのよ」

「ウチの仕事は当日警備その他がメインだからねぇ。本部の皆サン、てんてこ舞いらしいし?執行部も一応生徒会だから、

手伝ってあげなきゃ可哀想っしょ」

「ならちゃんと仕事してよね!!」

「ほーい」

桂木に一喝されて、久保ちゃんは素直に机に戻ると積まれた書類の一枚を手に取る。

カリカリとシャーペンを動かす久保ちゃんのワイシャツを俺は掴んだ。

「なぁ……今日も一緒に帰れねぇの?」

思っていたよりもずっと弱々しい自分の言葉に、自分でも驚く。

久保ちゃんが俺を見た。分厚いレンズの奥の細めが驚いたように少し見開かれている。

「うん……ごめんね」

申し訳なさそうな声音で謝って、くしゃりと俺の髪を撫でた。

校則や俺達に逆らう奴は容赦なく殴り飛ばす手も俺に触れる時はそっと、まるで壊れ物を扱う時のように触れていく。

例外なく。いつでも。

久保ちゃんは、優しい。

その優しい感触が辛くなって、

「別にいーけどッ!」

なんて虚勢を張った声を上げて、鞄を掴むと、

「じゃーなッ!」

後ろを振り返らずに教室を出た。

……久保ちゃんの馬鹿。

暗い廊下をとぼとぼ歩きながら心の中で悪態をつく。

執行部が本部の仕事を手伝わされてる中で、久保ちゃんだけは別枠で松本に扱き使われていた。

毎日遅くまで何かさせられていて、あまりに遅いから最近は一人で帰る羽目になっている。

面白くねぇ。久保ちゃんは松本の所有物かよッ!!

好き勝手使いやがって。

大体、久保ちゃんも久保ちゃんだ。

一円だか十円だかの借りの為にいっつまでもいいように……

十円がなんだよ。俺より十円のが大切なのかよ。

久保ちゃんの馬鹿。

八つ当たり気味に呟く。

そんなこと言ったって、しょーがねーんだけど。

あのことだって言ってねぇし言う気もねぇし。

弱いトコを見せるのは嫌だった。

誰にでも。例え久保ちゃんでも。

学校を出て、電車に乗る。

窓の外は暗く、月がぼんやりと白く光っていた。

横浜の夜景に重なって、自分の顔が窓ガラスに映り込んでいる。

――シケた面。

自覚していた。鉛玉でも飲み込んだような胸の内。

電車を下りてからマンションまでの帰路が憂鬱だった。

はぁ……

俺はここんとこ毎日、誰かに後を付けられていた。マンションまで。

ストーカーっつーの?目的は分かんねぇんだけど。

ホント、ただ後ろを着いてくるだけ。

鬱陶しいっつーか気味悪ぃっつーか。

ぶん殴ってやろうと思って待ち構えていても、一向に姿現す気配ねーし。

とっ捕まえようにも、影も形も見当たんねーし。

最近じゃもぉ無視することにしたけど、背後を取られ続けるのは意外とストレスが溜まって、

今日みたいな弱音が出ちまう。

天下の時任サマが、ストーカ-如きに、こんな。

揺れと共に電車が止まる。

人の波に押し出され、流れのまま改札を抜けた。

駅前はまだ人が多い。

それが家に近づくにつれ、人通りがまばらになっていく。

駅からマンションなんて大した距離はねぇけど、ほんの少し、人気の途絶える道がある。

だからか、感じる。背後の気配を。

繁華街を抜け、住宅街に向かっていつもと同じ足取りで歩いていく。角を曲がった、その時――

――きた。

ざらりと不快に神経を撫でる、その視線。

幾多の音に混ざって、俺に向かってくる、足音。

着けられて、る。

いつもよりソレに早く気づいたのは、人気があっても分かる程のあからさまな視線と気配のせいだ。

いつもは、それこそ俺じゃなきゃ気づかなかったんじゃねぇのってぐらい、

俺でさえ人がいないあの道でしか気づけなかったくらい、巧妙でソツのないストーキングしてきやがる癖に。

慢心か罠か……

思考に沈みかけて、はっと我に返る。

――冗談じゃねぇ。

俺をうじうじ悩ませんのはあの眼鏡一人で十分だっつーのッ!

俺は突然駆け出すと、帰宅ルートを外れて違う道に入る。

背後で焦る気配を感じたが、構わず走ってって、近くにある公園に入り込んだ。

そして、茂みの後ろに隠れると息を殺してじっと待つ。

静かな公園にざわざわと風に揺れる木々のざわめきと虫の音だけが、満ちている。

僅かな街灯と月明かりだけが光源。

闇の中、五感を鋭敏にし目を凝らしていると、

思った通り俺をストーキングしてたらしい男が息を乱しながら走り込んできた。

「――ッ!?」

暗くて姿は見えなかったけど、キョロキョロと公園内を見回す仕草は見える。

……俺を探してるのか……

……なんだ。

今までどんなに頑張っても姿を捉えることが出来なかったストーカー野郎を目の前にして、俺は拍子抜けした。

なんだ。大したことねぇじゃん。

ただの馬鹿じゃん。

……ホントはストーカーなんてずっと大したことないと思ってて、

怖くもねぇし、久保ちゃんに言うまでもないって思ってた。でも……

何するにしても、何されるにしても、久保ちゃんがいるのといないのとじゃ、全然違う。

……そっか。なんだ。俺、ストーカーに落ち込んでたんじゃなくて、

久保ちゃんと一緒に帰れねぇことに落ち込んでたのか。なんだ。

ばっかみてぇ。

俺は笑うと、気づかれないように男の背後に回る。

そして思いっきり蹴りを叩き込んでやった。

「でりゃぁッ!!」

「がはぁッ!!」

ストーカー野郎の体は地面を擦りながら派手にすっ飛んだ。

そして地面に横たわったままピクリともしない。

「……あれ?」

失神するほど強く蹴ったつもりはなかったんだけどな……

今までの鬱憤やらなんやらで余計な力、入っちまったのかも。

もしかして、死んじまってたりして……

倒れたままの男にゆっくりと歩み寄ると、覗き込むように顔を近づけた。

プシューッ!!

「うわッ!!」

途端、失神のふりしてたソイツに何かを顔の前に突きつけられて、咄嗟に後ろに下がった。

しかし吹き付けられたソレをモロ顔面に浴びてしまう。

「げほッげほッげほッ!!」

眼と喉が焼けるように痛い。

焼けた砂をぶっ掛けられたような感じ。

激しく咳き込みながら、勝手にボロボロと流れる涙を止めようと苦戦してると、

足払いを掛けられてその場にすっ転んだ。

「――げほッ!」

辛うじて受身を取ったものの、腰を強打する。

ってぇなぁッ!!

足や腕を押さえ込んでこようとする気配を感じて、相変わらずまともに息を出来ないし瞼も上がらないままだったけど、

めちゃくちゃに手足を動かして抵抗した。

でも、見えない分の悪さを埋めることは出来なかった。

腕を掴まれ上半身を押さえ込まれてしまう。

喉は大分楽になってきたけど、眼球は依然熱く疼き、視力が回復するのには時間がかかりそうだった。

当てずっぽうでストーカー目掛けて肩を捻ろうとした瞬間、何か生暖かく滑ったモノが、首筋の肌を這う感触。

――ぞわッ

何されてるか分からないながらも、生理的な嫌悪感に全身が総毛だつ。

「げほッ……てめッ……」

ぶっ殺すッ!!

その言葉が舌に乗る前に、人が殴られる鈍い音が響いて俺の上から不快な重みが消失した。

訝しく思う間もなく、

「時任」

俺の名を呼ぶ声が、鼓膜を震わせる。

ここで聞こえる筈のない、声。

「久保ちゃ…ん……」

「ちょっと待ってな」

状況が掴めず混乱する俺を置いて、足音が遠ざかる。

そう遠くない所で蛇口から水が流れるような音がして、すぐに止まった。

戻ってきた足音は俺のすぐ傍で止まり、冷たい水が雨のように瞼の上へと降ってきて、思わずビクッと肩を揺らしてしまう。

「大丈夫だから。目ぇ洗って」

久保ちゃんの声に促されて、俺は恐る恐る熱を持った瞼を押し上げた。

痛みと熱で堅く閉じた瞼を無理やり開けるのは結構大変だったけれど、何とか抉じ開けて眼球を水で洗い流す。

冷たさが瞼を撫で眼球を滑り頬を流れて、喉元のトレーナーを濡らしていく。

少量の水でも嘘のように痛みが引いていった。毒だかスプレーだか知んねぇけどそれほど威力のあるモンでもなかったらしい。

濡れた顔を制服の袖で拭うと、顔を上げた。

やっと回復した視界には、夜を背景に、濡れたハンカチを手に持って佇む久保ちゃんの姿が映る。

眼鏡のせいでその表情ははっきりとは分からない。

でもまぎれもなく久保ちゃんだった。

顔が見えて、それでやっとここに久保ちゃんがいるという実感が込み上げてくる。

なんだかどっと力が抜けてしまった。

へなへなと地面に手を付いて体を支える。

「久保ちゃん……なんで……」

何でここにいるんだ?本部は?仕事は?

混乱を隠さずぶつけると、俺を見下ろす視線がちょっと優しくなったような気がした。

「お前の様子が変だったから、本部の仕事放って追いかけてきた」

時任の方が大切だからさ?

当たり前のようにそう言われて、胸に痞えていたもやもやがぱっと霧散する。

現金だな俺。

「ってか、俺、何ぶっかけられたんだ?」

「変態撃退用の催涙スプレー。唐辛子成分の」

「変態が変態撃退グッズ使うなよなッ!!」

そしてんなもんをこのビューティー時任様の顔面に吹き掛けやがったことにもちょーぜつに腹が立つ。

ぶっ殺すッ!!

キッと久保ちゃんの足元に死体みたいに転がったストーカー野郎を睨み付けた。

俺がぶっ殺すまでもなく既に死んでそうな有様だった。微動だにしない。

殴打音は一回しかしなかった。

一発で久保ちゃんはこの男を沈めたことになる。

辛うじて息をしてはいるようだったが、さっきの演技とは違って完全に意識を失っているらしいソイツ。

もしかしたら殺してもいいくらいの気持ちで殴ったのかもしれない。

……久保ちゃんが手加減無しで殴るような、状況だったということ。

「……もしかして危機一髪だった?俺」

「うん」

即答した久保ちゃんの『うん』が何だか重かった。

どんな顔してるのかはやっぱり良く見えない。

ただじっと俺の顔を見つめ続けている。

思案するように。思いつめるように。

久保ちゃんは地面に座り込んだままの俺に手を差し出した。

「……時任ってさ、しつこい変態に好かれそうな顔してるよね」

脈絡もなく失礼なことを言われてムカっとくる。

「俺サマの美貌に不吉な難癖つけるなよ」

不機嫌に吐き捨てて、俺は差し出された久保田ちゃんの手に掴まる。

体を起こしてもらい立ち上がると、地面に伸びてる変態ストーカー野郎にもう一度蹴りを入れた。

ったく。久保田ちゃんが来てくれなかったら今頃、組み敷かれた俺が何されてたかなんて考えるだけで鳥肌が立つ。

女の子のストーカーだったら分かっけど、男だぜ男?

ぶちぶちと文句を垂れ続ける俺のそんな様子を見つめながら、久保田ちゃんが意味深な微笑みを浮かべた。

そして。



「だって、俺も時任のこと、好きだしさ?」



「…………はぁ?」

あまりに唐突すぎる言葉に一瞬で思考が止まる。

固まった俺に構わず、久保ちゃんは更に言葉を続けた。

「俺、しつこい上に変態だし」

「へ、変態って……」

「変態だよ。俺、いつも頭の中で時任にすーごいことしちゃってたし」

「ッ!!」

「気づいてなかったの?」

久保ちゃんがくっと喉の奥で笑った。

「好きだよ。時任。ホントに気づいてなかったの?」

重ねるようにそう言われて、俺は何も言葉が浮かばずただたじろぐ。


俺、ホントに分かってなかったのか?


久保ちゃんがなんでキスするみたいな距離で俺を見つめてたのか。


あんなに切なそうな目で、なんで俺を見てたのか。


なんであんな笑い方してたのか。


久保ちゃんが優しい意味を。


いつでも、何処でも、俺には、俺にだけ優しいその意味を。



ホントに気づいてなかったのか?


だって、俺は……

「俺は……俺も久保ちゃんのこと好きだけど……多分久保ちゃんの言ってる好きと同じなのかは、まだ、分かんねぇ」

「……だろうと思ってた」

久保ちゃんは肩を竦めた。

その皮肉っぽい仕草に構わず、眼鏡の奥の見えない瞳を真っ直ぐ見据えて言葉を続ける。


「好きとか、まだ良く分かんねぇけど……俺、久保ちゃんになら何されてもいい」


「……そんなこと言って、知らないよ?何するかわかんないし俺」

久保ちゃんが俺に向かって手を伸ばした。

思わず体が強張ってしまったけれど、久保ちゃんは俺を、柔らかく、そっと、ただ抱き締めた。

制服越しに伝わる温度。

見知ったモノである筈なのに、一度意識してしまうとソレが全然知らない熱であるような気がしてきてしまう。

なんだか久保ちゃんの顔が見辛くって胸元に顔を埋めると、ワイシャツに染み付いた煙草の香りが鼻腔を擽った。

急に滅茶苦茶恥ずかしくなってかーッと顔に血が集まってくる。

何赤面してるんだよ俺!!

俺の葛藤なんてお構いなしに耳元で響く低い声。

「まだ待つからさ?」

お前の『好き』が俺と同じになるまで。

いずれそーなることを確信してるような言い方。

自信があるんだかないんだか意味不明な奴。

心の中でそうボヤいたけど、半分照れ隠しだ。

顔を上げない俺の髪を撫でながら久保ちゃんは、

「後さ、一個、先に謝っておきたいことがあるんだけど」

なんて言い出した。

「……なんだよ」

「最近、お前を着けてたストーカー、実は俺」

「はぁ!?」

さらりと言われた信じらんねぇ衝撃発言に、流石に顔を上げて久保ちゃんに詰め寄る。

「ちょ……じゃ、この男は何なんだよッ!!」

「ただの変態」

「ストーカーって、何やってんだよお前!!」

「んー?文化祭の準備とか何だかんだでお前も帰るの結構遅かったでしょ?

最近日が暮れるの早いなぁとか考えながらお前の背中眺めてたら、いつの間にか家だった。」

「毎日!?」

「毎日。怒ると思ったから気づかれないように見てたのに、お前ってば結構鋭いからねぇ」

結構鋭いからねぇじゃねぇだろーがッ!!

俺が落ち込んでたのは、徹頭徹尾お前のせいかよ。畜生。

呆れ果てて体から力が抜けまくったっつーのッ!

いつも無茶苦茶やる男だけど、今回は種類の違う無茶苦茶っつーか少なくとも俺には理解できねぇっつーか。

でも、久保ちゃんが俺を好きで、俺が久保ちゃんの傍にいる限り、これからもこんな感じなんだろうなぁと思う。

「女じゃあるまいし、そこまですることねーだろ!!」

「でも現に今日こーして襲われてたじゃない」

そう言われてぐっと言葉に詰まった。

そーなんだけど!……でも……なんか……

釈然としない、けど、

「無事で良かった」

とか笑う久保ちゃんの顔見てるとどーでも良くなった。

「さて、と。この変態を警察に突き出して帰りますか」

「俺はお前も突き出したい気分だけどな」

軽口を叩き合いながら、十月の夜空を見上げる。

俺を落ち込ませ悩ませていた問題は全て解決したように見えて、その実、新しい悩みが出てきただけな気もして正直、複雑だ。

俺が好きだと告白してきた久保ちゃんへの態度とか、

実はしつこくて変態らしい久保ちゃんと一緒にいて果たして俺様は大丈夫なんだろうかとか。

何より、久保ちゃんがいなきゃ沈んでしまう自分の心にいい加減向き合わなきゃなんねぇ。

待っててくれるらしいからな。そんな急ぐこともねぇか。

そんな事を考え、黒い空から隣に視線を移す。

まだ気絶してる変態野郎の背中に片足を乗せて、携帯で110番通報してる久保ちゃんを見ながら、

何されてもいいなんて咄嗟に言っちまったけど……




















久保ちゃん、何する気なんだろう、なんて少し背筋が寒くなったりもした。

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