時任可愛い
「何か……変じゃね?」
戸惑いを声に滲ませ、少しの熱っぽさを含んだ瞳でこちらを見る。
上半身は殆ど裸だ。
二の腕にワイシャツが絡まっている。
唇で肌に触れながら、
「変じゃないよ、これが大人の慰め方。トッキーが知らなかっただけだよ」
彼が知らないことは随分と多い。
故に、騙してしまうのは随分とたやすい。
まぁ、嘘という訳でもないけど。
組み敷いている、青年とも少年ともつかない未成熟な肢体を眺める。
劣情を煽るには充分、魅力的だ。
彼に好意を抱いていれば、尚更。
……いくら無知とは言え、もし、時任に久保田との経験があれば、断固として拒絶しただろう。
しかし今、躊躇いがちに滝沢の愛撫を受けている時任は、一切、そういう経験がないらしかった。
これがセックスであると、それすらも分かっているか危ういようなそぶり。
滝沢にとってそれはちょっとした衝撃だった。
異常だと思った。
彼らの関係を、改めて。
友情には見えない。
しかし愛情でもない。
恋でも愛でもないというのなら、君達は。
「気持ちいい?」
脇腹をなぞると、びくっと身体を震わせてみせた。
胸元を舐めると、耐えるようにシーツを掴む手に力が入る。
「……くすぐってぇ」
「OKOK」
感度は良好。
滝沢は笑った。
幾分、自虐的に。
「ホントは好きな人ともこーゆーことするんだけどな」
時任の背筋が強張った。
「くぼっちとさ、こーゆーことしたいって思ったこと、ある?」
見上げる視線はとろりと溶けているが、真っ直ぐにぶつかってくるのは平常と同じ。
うっすらと唇が開いた。
「考えたこと、ねー」
あーあ。
滝沢は思う。
これからは考えちゃうんだろうな。
自業自得と言えばそれまでだ。
時任に考えるきっかけを与えたのは、外ならぬ滝沢なのだから。
今までもずっと、くぼっちのことばっか考えてた癖にね。
でも今は、今くらいは、俺のこと考えてればいいんじゃない?
慰めると言った言葉に嘘はない。
快楽で忘れてしまえばいい。
ジーパンも下着も取り去ると、他人の手など触れたことないだろうソレへ指を絡める。
彼は驚いたように目を見開き制止するように手を伸ばしたが、構わず指で擦り脳髄を揺らす快楽を与え続けると、背を弓なりに反らして喘いだ。
目をつむり、眉をひそめ、睫毛を震わせているその表情は、与えられる快楽に溺れきっている。
自分に正直な彼は快楽にも正直だ。
全く、可愛いねぇ。
鼻にかかった声が鼓膜を震わせる。
「たき、さ……」
「どしたの?滝さん」
名を呼ばれ、はっと我に返る。
「ああ、ゴメンゴメン。ちょっと思い出し笑い」
ごまかすように煙草をくわえ、長身の彼を見上げる。
彼の顔には呆れも親しみも何もなく、何の感情も読み取ることはできなかった。
隣に、同居人の姿はない。
家で寝ていると言っていた。
だから、だろうか。
あの時のことを思い出したのは。
――彼は知っているのだろうか。
知ったら、どうするだろうか。
彼の表情が動くのを別段期待したわけではない。
だが、滝沢は言った。
「くぼっちさ、なんでトッキーのこと抱かないの?」
戸惑いを声に滲ませ、少しの熱っぽさを含んだ瞳でこちらを見る。
上半身は殆ど裸だ。
二の腕にワイシャツが絡まっている。
唇で肌に触れながら、
「変じゃないよ、これが大人の慰め方。トッキーが知らなかっただけだよ」
彼が知らないことは随分と多い。
故に、騙してしまうのは随分とたやすい。
まぁ、嘘という訳でもないけど。
組み敷いている、青年とも少年ともつかない未成熟な肢体を眺める。
劣情を煽るには充分、魅力的だ。
彼に好意を抱いていれば、尚更。
……いくら無知とは言え、もし、時任に久保田との経験があれば、断固として拒絶しただろう。
しかし今、躊躇いがちに滝沢の愛撫を受けている時任は、一切、そういう経験がないらしかった。
これがセックスであると、それすらも分かっているか危ういようなそぶり。
滝沢にとってそれはちょっとした衝撃だった。
異常だと思った。
彼らの関係を、改めて。
友情には見えない。
しかし愛情でもない。
恋でも愛でもないというのなら、君達は。
「気持ちいい?」
脇腹をなぞると、びくっと身体を震わせてみせた。
胸元を舐めると、耐えるようにシーツを掴む手に力が入る。
「……くすぐってぇ」
「OKOK」
感度は良好。
滝沢は笑った。
幾分、自虐的に。
「ホントは好きな人ともこーゆーことするんだけどな」
時任の背筋が強張った。
「くぼっちとさ、こーゆーことしたいって思ったこと、ある?」
見上げる視線はとろりと溶けているが、真っ直ぐにぶつかってくるのは平常と同じ。
うっすらと唇が開いた。
「考えたこと、ねー」
あーあ。
滝沢は思う。
これからは考えちゃうんだろうな。
自業自得と言えばそれまでだ。
時任に考えるきっかけを与えたのは、外ならぬ滝沢なのだから。
今までもずっと、くぼっちのことばっか考えてた癖にね。
でも今は、今くらいは、俺のこと考えてればいいんじゃない?
慰めると言った言葉に嘘はない。
快楽で忘れてしまえばいい。
ジーパンも下着も取り去ると、他人の手など触れたことないだろうソレへ指を絡める。
彼は驚いたように目を見開き制止するように手を伸ばしたが、構わず指で擦り脳髄を揺らす快楽を与え続けると、背を弓なりに反らして喘いだ。
目をつむり、眉をひそめ、睫毛を震わせているその表情は、与えられる快楽に溺れきっている。
自分に正直な彼は快楽にも正直だ。
全く、可愛いねぇ。
鼻にかかった声が鼓膜を震わせる。
「たき、さ……」
「どしたの?滝さん」
名を呼ばれ、はっと我に返る。
「ああ、ゴメンゴメン。ちょっと思い出し笑い」
ごまかすように煙草をくわえ、長身の彼を見上げる。
彼の顔には呆れも親しみも何もなく、何の感情も読み取ることはできなかった。
隣に、同居人の姿はない。
家で寝ていると言っていた。
だから、だろうか。
あの時のことを思い出したのは。
――彼は知っているのだろうか。
知ったら、どうするだろうか。
彼の表情が動くのを別段期待したわけではない。
だが、滝沢は言った。
「くぼっちさ、なんでトッキーのこと抱かないの?」
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