時任可愛い
Nicotinism
それは中毒
この猫は好奇心が強い。
今日の興味の対象は久保田の銜えているセッタだった。
じぃっと穴が空くほど見詰められ、久保田は苦笑すると、
「吸ってみる?」
己の銜えていたそれを差し出す。
頷いて受け取った時任は、恐る恐る銜えて煙を吸い込んでみる。
そして久保田の予想通り盛大に噎せて咳き込んだ。
「~~~~にっが!!けっむ!!まっず~~~ッ!!」
たった一吸いで突き返すと、涙目でそう喚く。
久保田は笑って、殊更美味そうに煙を吸って紫煙を吐き出した。
「まぁ、最初は大体そーだよね」
「もう二度と吸わねー」
どうやらセッタは猫のお気に召さず、その上機嫌まで損ねたらしい。
眉を顰めて睨むようにして久保田と口元の煙草を見ている。
時任が煙草に興味を抱いたのは、久保田が毎日毎時間絶えず美味そうに吸っていた為であり、
そんな久保田に時任は騙された、と、八つ当たりに近い思いを抱いていた。
久保田が執着しているから興味を抱いたのだ。
「こんなんの何がいいんだよ!わけわかんねぇ」
不貞腐れたまま拗ねたように言う。
「苦いしまっずいのにさぁ」
「苦いし不味くても病み付きになるモノってあるっしょ」
「ねーよそんなん」
久保田は意味深に笑っている。
「例えば」
久保田は身を乗り出すと、時任の頭を引き寄せ唇を重ねた。
啄ばむように何度も唇を擦り合わせ、粘膜を舌で舐める。
微かに開いた隙間から舌を差し込めば、唾液と舌が絡み合って濡れた音が静かな部屋に響く。
時々漏れる苦しげな吐息。
ゆっくりと唇を離すと、目元を上気させた時任の潤んだ瞳を覗き込む。
「煙草を吸ってる俺のキスはとっても苦い筈だけど、時任は嫌いじゃないでしょ?」
俺は甘いけどね。
そう言って、ちゅっと目元にキスを落とす。
時任は答えず、顔を赤くしたまま唸った。
手には火の付いたセッタを持ったままだ。
その余裕が時任は悔しかった。
「煙草の成分にね、ニコチンってあるんだけど」
とんっと灰皿に灰を落とし、また紫煙を吸う。
「麻薬みたいなもんでね、その強い依存性でニコチンなしじゃいられなくなるんだよ。苦くても欲しくなるのはその所為」
代償は多く、その中には生すらも含まれている。
それでも抗うのが不可能な引力で求めさせる。
目の前の、この猫のことだ。
「……じゃあ」
ぐいっと久保田の顔を引き寄せ、近い距離を更に狭めると時任は囁くように言った。
「俺が久保ちゃんとすっげぇキスがしたくなんのはニコチンのせいだな。久保ちゃんのキス……苦いし」
お前のせいで俺までニコチン中毒だと、笑う時任。
それは久保田の余裕を崩したい時任の天邪鬼な答えだったが、久保田にとっては欲を煽るものでしかなかった。
身体の奥から迫り上げてくる飢餓感の様な何かが情欲を伴って全身を支配する。
「時任が中毒なのはニコチンじゃなくて俺でしょ」
そう囁き返して、邪魔になった吸殻を灰皿に押し付けた。
二人、身を焦がすのは、
手遅れなくらい重度の依存症。
それは中毒
この猫は好奇心が強い。
今日の興味の対象は久保田の銜えているセッタだった。
じぃっと穴が空くほど見詰められ、久保田は苦笑すると、
「吸ってみる?」
己の銜えていたそれを差し出す。
頷いて受け取った時任は、恐る恐る銜えて煙を吸い込んでみる。
そして久保田の予想通り盛大に噎せて咳き込んだ。
「~~~~にっが!!けっむ!!まっず~~~ッ!!」
たった一吸いで突き返すと、涙目でそう喚く。
久保田は笑って、殊更美味そうに煙を吸って紫煙を吐き出した。
「まぁ、最初は大体そーだよね」
「もう二度と吸わねー」
どうやらセッタは猫のお気に召さず、その上機嫌まで損ねたらしい。
眉を顰めて睨むようにして久保田と口元の煙草を見ている。
時任が煙草に興味を抱いたのは、久保田が毎日毎時間絶えず美味そうに吸っていた為であり、
そんな久保田に時任は騙された、と、八つ当たりに近い思いを抱いていた。
久保田が執着しているから興味を抱いたのだ。
「こんなんの何がいいんだよ!わけわかんねぇ」
不貞腐れたまま拗ねたように言う。
「苦いしまっずいのにさぁ」
「苦いし不味くても病み付きになるモノってあるっしょ」
「ねーよそんなん」
久保田は意味深に笑っている。
「例えば」
久保田は身を乗り出すと、時任の頭を引き寄せ唇を重ねた。
啄ばむように何度も唇を擦り合わせ、粘膜を舌で舐める。
微かに開いた隙間から舌を差し込めば、唾液と舌が絡み合って濡れた音が静かな部屋に響く。
時々漏れる苦しげな吐息。
ゆっくりと唇を離すと、目元を上気させた時任の潤んだ瞳を覗き込む。
「煙草を吸ってる俺のキスはとっても苦い筈だけど、時任は嫌いじゃないでしょ?」
俺は甘いけどね。
そう言って、ちゅっと目元にキスを落とす。
時任は答えず、顔を赤くしたまま唸った。
手には火の付いたセッタを持ったままだ。
その余裕が時任は悔しかった。
「煙草の成分にね、ニコチンってあるんだけど」
とんっと灰皿に灰を落とし、また紫煙を吸う。
「麻薬みたいなもんでね、その強い依存性でニコチンなしじゃいられなくなるんだよ。苦くても欲しくなるのはその所為」
代償は多く、その中には生すらも含まれている。
それでも抗うのが不可能な引力で求めさせる。
目の前の、この猫のことだ。
「……じゃあ」
ぐいっと久保田の顔を引き寄せ、近い距離を更に狭めると時任は囁くように言った。
「俺が久保ちゃんとすっげぇキスがしたくなんのはニコチンのせいだな。久保ちゃんのキス……苦いし」
お前のせいで俺までニコチン中毒だと、笑う時任。
それは久保田の余裕を崩したい時任の天邪鬼な答えだったが、久保田にとっては欲を煽るものでしかなかった。
身体の奥から迫り上げてくる飢餓感の様な何かが情欲を伴って全身を支配する。
「時任が中毒なのはニコチンじゃなくて俺でしょ」
そう囁き返して、邪魔になった吸殻を灰皿に押し付けた。
二人、身を焦がすのは、
手遅れなくらい重度の依存症。
この記事にコメントする