時任可愛い
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「お前の望みは何だ?」
黒い猫目が真直ぐに俺を見る。
「三つだけ、何でも叶えてやる」
黒髪の綺麗なその子は静かにそう言った。
「一つで良いよ」
俺はそう言う。
「ずっと傍に居て欲しい」
彼は、それを聞いてやや眉を顰めた。
「お前は、ずっと傍に居る気もないくせに?」
俺は笑う。
「さぁ?」
手の中の、小さなランプが鈍色に光る。
「どうだろ」
表面に、俺の顔が歪んで映った。
「まぁいいよ、お前が何願おうとさ」
やや投げやりに、今度は空を仰ぐ。
「で、他の望みは?」
俺は、煙草を取り出す。
「ないよ」
火を付ける。
「ないよ、じゃねーよ」
吸い込む。
「三つ叶えないと、お前から解放されねーんだけど」
吐き出す。
「知ってる」
白煙が、二人の間に立ち昇る。
「だから、保険」
怪訝な顔が白くけぶる。
「俺の望みは、ずっと傍に居て欲しい、だって言ったっしょ」
今日は、煙草が酷く美味い。
「望みの力なんて信じてないから」
煙草が美味いなんて思ったのは、初めてだ。
「俺は死ぬまで、二つ目の望みを口にしないよ」
手の中には、君の運命。
「死ぬ時は、一緒にこのランプも壊して逝くから」
魔法のランプの正しい使い方。
「最悪だ」


君の声は、何故かとても優しく鼓膜を震わせた。

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