朝、雨がばちばちと激しく窓を叩く音で目が覚めたくらいだったから、凄い天気なんだろうと予想してカーテンを開けると抜けるような快晴だった。
拍子抜けする。
晴天はまさしく雨に洗われたようで、しかしよくよく見れば洗い過ぎて色落ちしたような青。
都会の空なんてそんなものだろう。
そんな空模様とは関係ないけど唐突に愛してると言いたくなって、ソファーにだらしなく寝そべってテレビ見てる時任に向き直る。
唐突といえど俺はいつだって時任への愛に満ち溢れてるからこれで常態。
「愛してるよ」
時任が俺を見た。
眠そうな目でゆっくりと瞬いて、俺を見る。
「愛してる」
同じ言葉を繰り返した俺に、何か言いたげな目をして口を開いたから塞ぐつもりでキスをした。
頼むから余計なこと言わないで。
好きとか愛してるとかさ。
お前に会うまで俺の中は空っぽだったんだよ、ホントのホントに。
だけど今はお前と居るだけで流れ込んでくる何かに溺れそうな程で、息も出来ないくらいに胸一杯。
キャパの少ない薄い皮袋は破裂寸前。
お前の仕草一つで俺の中はどんどんどんどん満たされていくのに、好きなんて言われた日にはパンという軽快な音と共に破裂しちゃいそう。
嫌いだって一緒。
針で刺した程度もちっぽけで些細な痛みが俺の内と外を破裂させる。
なんせ外殻の柔さと薄さだけはお墨付き。
破れて飛び散った内容物はきっと理性じゃどうにもできない。
そもそも外殻こそが理性。
好きなんて言われたらお前のこと殺したくなりそうだし、
嫌いなんて言われたら死にたくなりそうだし。
だから、言葉なんて要らないよ。
何も話さないでただ俺の愛を受け止めて、なんて、我が儘で重たいなぁ。
ごめんね?
唇を離すと、とろとろにとろけた表情の時任が濡れた眼差しで俺を見上げた。
唇は唾液でてらてら光ってる上に半開きだし、呼吸は乱れてるしでその色気の壮絶なこと。
溶けた眼差しは相変わらず俺を真っ直ぐ見上げていて、唇を固くきゅっと閉じると時任は、そのまま、そっと俺に口付けた。
触れた柔らかい外殻から時任の想いが静かに温かく、拒絶出来ようもない程優しく、流れ込んできた。
普段は恥ずかしがって強請ってもキスなんてしてくれないのに、こんな時だけ、こんな。
何だか泣きそうな気分だ。
そんな身勝手な事を思って、少しだけ笑った。