日頃、時任が俺の事を「鬼畜ッ!サドッ!変態ッ!」等と悪し様に言うもんだから、
「じゃあ時任が鬼畜になってみる?」
と提案し、時任と女王様ごっこをすることにした。
雰囲気を出す為に着せたボンテージファッションと鞭を見下ろして、時任は既にかなり嫌そうな顔をしている。
これからが楽しいのに。
「なんでこんなカッコしなきゃなんねぇんだよ……」
「女王様っていったら鞭とボンテージっしょ」
「っていうかなんで俺ら、こんなことやってんだ?」
「俺が『鬼畜になってみる?』って言ったらお前が肯いたからでしょ?なってみたかったんじゃないの?鬼畜」
なーんて、俺が女王様な時任に興味津々なだけだったりするんだけどね。
「……でも、なーんか違う気ぃするんだよなぁ」
小首を傾げてぶつぶつ呟く時任。
「折角だし、なんか女王様っぽいこと言ってみなよ」
「……えーと、俺のことは時任サマと呼べ!」
そう言って腰に手を当てふんぞり返った。
……なんてゆーか、単にいつもの時任だなぁ。
普段からこの子、王子様だしねぇ。
「で、他には何すんだ?」
「下僕に聞いちゃ駄目でしょ。足で踏み付けて鞭で叩いたりとかかな?」
「げぇーッ!なんだそりゃッ!変態じゃんッ!」
「そーゆーもんなんだって」
時任の足元に傅いて、右足を持ち上げ甲にキスをする。
途端にカッと時任の顔に朱がさした。
「ほら。足舐めろ、とか言ってみなよ」
固まった時任の右足をそのまま引っ張ると、上手い具合にソファーへと仰向けに倒れこんだ。
「うわッ……あッ……ッ!」
掴んでいる足の裏にねっとりと舌を這わせる。
敏感な時任はびくびくと肩を揺らしたが、構うことなく音を立ててキスをし、愛撫を加えていく。
「ヤッ……やめろよッ!久保ちゃッ」
「それは命令?女王様」
「てかッ!こ、これじゃいつもと変わんねぇじゃねぇか……ッ!」
時任が涙目で睨んだ。
体も声もふるふると震わせて、目じりを赤くして。
あー可愛い。駄目だ。
いじめたい。
薄い唇に噛み付くようなキスを仕掛けて、舌で口内を堪能する。
弱々しく抵抗していた腕から力が完全に抜けたのを確認して、鞭で後ろ手に縛った。
鞭の使用法が間違ってる気がしなくもないけど、なんかこの構図凄くクルんだよなぁ。
「ごめん。やっぱ俺、鬼畜の方が向いてるわ」
服を脱がしながら一人ごちる。
愛しいから守りたいし、大事にしたい。
それは当たり前なんだけど、一方で、愛しいからこそ苛めたい、そういう感情もまた俺の中に歴然と存在する。
この感情に起因するものはなんなんだろう?
好きな子を苛めたいなんて我ながら子供っぽいと思うんだけど。
恐らく、そうやって俺は時任に甘えている。
何をしてもお前が俺のことを好きでいてくれるか、こんな方法で確かめている。
罪を犯しても、許されるなら心地いい。
苛めることでしか愛情を表現出来ない思春期前の男子学生のように幼稚な恋の仕方。
でも、それもいい。
相手が時任なら。
そんなことを考えながら、俺は甘い体温と存在感に溺れていった。
「この鬼畜野郎――ッ!」
「はいはい」