夜中に、突然チャイムが鳴り響いた。
扉の向こうに立っていたのは、
「……よぉ、滝さん」
トッキーだった。
「どした?こんな夜更けに」
「…………」
トッキーは答えず、無言で俺の狭い部屋に上がり込むと着ていたパーカーをいきなり脱ぎ捨てる。
露わになった上半身から目を逸らす間もなく、一言。
「ヤろうぜ」
そう言って俺に向き直った。
当然、俺は面食らう。
ヤるって……ヤっていいの?ってか挿れていいの?なんて無粋な事尋ねたくなるくらい、トッキーが雄々しい。
目が据わってる。
「ヤろうってば、なぁ」
狼狽えたままの俺に焦れたのか、トッキーは俺のワイシャツに手を伸ばしてプチプチとボタンを外し始めた。
いや、お兄さん密かに君に惚れてたりするから、吝かじゃあないんだけど。
君とヤるにあたって無視できない巨大な問題が……
その時。
ドゴォッ!!という破壊音が玄関から聞こえた。
いやぁな予感。
恐る恐る玄関の方をを覗き込むと、巨大な問題が我が家の玄関に立っていた。
フツーに蹴り倒したみたいだけど、それ、鉄の扉だよね?
人間離れした事をやってのけたくぼっちは、しかしいつも通りの飄々とした顔付きで上半身裸のトッキーとワイシャツ脱がされかけてる俺を見やり、
「何やってんの?」
聞きにくい事をこれまた平然と聞いた。
そんなくぼっちをトッキーは横目で睨んで、
「浮気」
男らしく言い放った。
いや確かに君がしようとしてることはそうかもしれないけど、それ言っちゃったら俺の命が危なくない?
「時任」
トッキーの威嚇する猫みたいな態度にくぼっちは溜め息を吐いた。
「アレは誤解だって言ってるでしょ?」
「信じられっか」
「俺が時任以外に勃つ筈ないじゃない」
「俺は勃つけどな」
ホント男らしいよトッキー!!
どうやら、くぼっちが浮気したとかしてないとかで揉めているらしい。
夫婦喧嘩は何とやら。
「まぁまぁ、くぼっちは誤解だって言ってるし、後は二人で話し合えばいいじゃない」
これ以上のとばっちりはごめんだと、仲裁を試みるも、
「ヤダ。俺は今から滝さんとヤんの」
トッキーはへそを曲げたまま俺から離れようとしない。
「泊まってってもいいよな!?」
俺のワイシャツを掴むトッキーの後ろに、黒光りする拳銃を構えるくぼっちの姿が見えた。
…………ごめん。
銃口向けられて正直な気持ちを口にできる程、お兄さんは命知らずじゃない、かな……