時任可愛い
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校舎裏に紫煙が立ち上る。
石橋達はいない。
こんな場所で煙草を吸う酔狂な奴は俺くらいだろう。
3本目に火を付けた頃、時任が現れた。
時任一人だ。
二人きり。
そのことに胸が踊る俺は、大概単純だ。
俺と煙草の両方を視界に映し、呆れたように片眉を上げる。
「大塚、お前、俺に殴られる為に悪事を働いてるとしか思えないぜ」
すぐに好戦的な笑みを浮かべ、指をバキバキ鳴らしながら歩いてくる。
応戦する為に、煙草を揉み消して立ち上がる。
間違ってはいない。
「んなワケねぇだろ。頭沸いてんじゃねぇの」

「だってなぁ、わざわざ執行部の巡回ルートで喫煙なんて、俺に会いたいのかと思っちまうじゃん」
そんなことは露程も思ってなさ気に。


「俺が好きなんだろ?」

煙草が苦い。
イライラする。
「素直になれよ、大塚クン」
てめぇ、そんなこと言って、俺が素直に好きだとか言っても笑い飛ばして本気にもしねぇ癖に。
余裕気に、笑いやがって。


「ああ、好きだよ」


時任はぽかんとした表情で固まって、何を言われたのか、すぐには理解できないようだった。
その表情を可愛いと思ってしまう、俺は。
「なッ……!!」
言葉の意味を理解したのか、猫目を真ん丸に見開いて、そして。

その表情のまま、耳まで真っ赤になった。

「……に言ってやがんだ気色悪ぃな!!」
「うるせぇ!!てめーが素直になれって言ったんだろうが!!」
つか、なんで、顔赤く……
「それはねぇ」
「うわぁあああ!!く、久保田!!」
いきなり背後の窓ががらりと開いて、久保田が顔を覗かせた。
心臓が止まりそうになる。
よっこらせと年寄り臭い掛け声をかけながら身軽に窓枠を飛び越えると、時任の肩を抱き寄せた。
そのまま、まだ赤い時任の耳元すれすれで、
「好きだよ」
と囁いた。
途端に、時任は一瞬で真っ赤になる。
……先程の、比ではないくらい。
「とまぁ、365日1日1時間置きに俺が好きだよって言ってるのに未だ真っ赤になっちゃう子なんだよねぇ、このように」
「~~~1日1時間置きになんて言ってねぇだろ!!」
365日は否定しないのか。
体が脱力するのを感じる。
「誰に言われても赤くなっちゃうでしょ。桂木ちゃんでも」
「何で桂木なんだよ」
「鈍感」
「なにーッ!!」
怒り始めた時任を宥めつつ、俺に向き直る。
笑う。


「勘違いしないように、ね」


俺の顔も、火が吹いたように熱く、赤くなった。

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