時任可愛い
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1977年(1978年)9/8 潮稔生誕

1979年8/24 久保田誠人生誕

1981年 潮氏ベトナム着任

1983年2月 バス事故 (稔君当時5歳)

1987年 潮氏ベトナム再着任

1992年 久保田傷害事件

1993年 稔君死亡認定

1995年 東京下北沢にて時任逃亡中

1995年 邂逅の牙立ち上げ

1995年5月 横浜にて久保田誠人出雲会年少組リーダーに

1996年1月17日 小宮死亡

1996年1月19日 久保田出雲会退会

1996年1月21日 久保田東条組組員襲撃

1996年2月11日 久保田時任を拾う

1996年2月14日 時任目覚める

1996年3月8日 時任久保田の腕を折る

1996年3月10日 時任謝る

1996年3月15日 時任パスタを作る

1996年4月30日 時任ちくわぶを買う

1996年6月2日 翔太引っ越す

1997年1月16日~ 沙織編

1997年8月 滝沢編

1997年 12月10日志村殺害事件

1998年4月 佐藤義郎氏出所

1998年(穀雨:4/20~5/6) 時任豆知識披露

1998年5月 チンピラ佐藤老人宅に押し入り

1998年 (冬?)修司死亡

1998年 修司死亡より49日頃の6日 時任拉致

1998年 (4月より数ヶ月後)10日出雲会タンカー襲撃事件


頑張った。。。。。。多分漏れはない筈。
やっぱりどう考えても時任が逃げ出した時期とWAの流出時期一緒だな~~~~~~~~
修司死亡時期を冬にしてるのは、ゲーセンの人たちの服装が冬っぽかったのと、真田さんが「まだ時期ではない」って言ってるバックの木が枯れているからです。
小宮さんが死んで二年近くたつ、だしなぁ。まぁあんまり真冬だと三年近く、のような気がするけど。
時系列考察1にしたのは、この先、情報が更新されることを期待してるからだよ!

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もう私のGWは終わりましたよ……楽しかったけど、楽しすぎて今が寂しい……
次ぎ会えるのはいつかなー。
夏か秋か冬か……
何だかんだ毎年一回以上会ってるけどね、この距離でね(笑)

一日目。
横浜の赤レンガ倉庫でめっちゃ美味しいオムレツとパンケーキ食べて(8時に並んで食べられたのが10時過ぎという盛況具合。まぁ私は安定の寝坊と遅刻かまして合流したの8時半でしたが……)
我が家で少しまったりして、自由が丘にガレット食べに行って、しかしまさかの店貸切に泣き、渋谷のガレット屋さんでガレットの美味さにおののき、ヒカリエでお土産物色し、我が家に帰って進撃の巨人を熱く語りマカロン齧りながらエヴァQを鑑賞してカヲシン本読んでもらって就寝。
二日目。
朝ぐだぐだ。basaraをする。佐助の良さを力説。佐助の良さは分かってもらえたけど、幸村のかわいさの説明は難しいね・・・。可愛いんだけど、ばかわいいんだけど、私幸村のあの変な真面目さが良いと思うんだよね。単純な熱血馬鹿ではないのですよ。馬鹿だし熱血だけど(笑)後は持ってる限りの久保時ポスターできゃっきゃ。大きさが良い。そして久保時熊できゃっきゃ。荒磯扉の久保時熊を再現してみたよ!そして遅めの昼食(おやつ)を食べにカフェマルコリーニへ。流石の美味しさでしたよチョコ……イチゴのコンポート入りホットチョコレートとガトーショコラの美味しさがもう筆舌に尽くせぬレベルでした。そしてまたヒカリエでお土産を買いまくり、ハワイアンなお店でチキンとフォーを食べて美味しさに悶絶し、東京駅でエリさんとお別れしました!

凄いグルメツアーだよね(笑)
エリさんと翔ちゃんが遊びに着たら大体そうなるよ!
しかしレミゼ見たかったな。。。。。。本当に残念。
ガレットの店貸切も大概信じらんねぇと思ったけど、あっちはまぁ、渋谷のが奇跡的な美味しさだったんでいいや(笑)

そして、連載再開前夜祭的なアレでもあったんですが、しみじみ思うのは、私、連載再開までのこの三年間で久保時に飽きてたとは思わないんだけど、でもなんだかんだ乗り切れたのは皆と同じ話題をなんども繰り返しながらも(笑)一緒に三年間耐えたからなんだろうなーと。
出会いに本当に感謝する。
出会いっていうか皆が私に声かけてくれたからだよね。
皆ありがとう!!大好きだよ!!

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テンションというか血糖値上がらなすぎてヤバいだっる…
連休明け辛いですね…
お土産色々いただいたというのにこの時間になっても変にダルいし眠いしあー早く週末にならないかなぁ。
そして早く再来週にならないかな…
表紙&巻頭カラー&クリア下敷き&図書カードとかアダプタ祭り過ぎるワード。


三連休ですが、土曜日光ちゃんと蒼梓ちゃんとりーやんが遊びに来てくれたよ!!
りーやんと蒼梓ちゃん入れ違いだったけど(笑)
前半は荒磯新装版に萌えMWに萌えドラマCDに萌え久保時PVに萌え。
何か思い返したら良く分からんアレだったけど非常に楽しかったです(笑)
皆同い年だったしね( ´∀`)キャッキャした
後半は更にグダグダでQ観た後はフツーにテレビ見てご飯食べてダラダラ喋ってただけだしね(笑)
関西支部とは良くあるアレですが、やっぱり拠点が部屋になるとこうなっちゃうよね~(笑)
でも非常に楽しかったです(笑)
日曜日は亜茶と進撃の巨人について大分熱く語った。
最新刊を読んでからの考察をずっと語りたかったから非常に楽しかった。
漫画読みながらホント語りたい。
月曜日はひたすら小説書いたり時任描いてた。幸せだった。
そうそう紅蓮もうblogに上げないって言ってたけどエロシーン省けばそこそこ載せられそう何で可能な限り上げることにしました。
二章から昔のに準拠してます。話の流れは。
読み比べたら全然違うかもしれないけど(笑)


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売春窟を出たその足で、引換所に向かい、首と賞金とを交換する。真夜中に叩き起こされた引換所の主は当初不機嫌そうであったが、久保田の面体を見た途端、卑屈なまでに愛想良く応対した。
痩躯長身。面差しや態度は飄々としており、他人に恐れを抱かせるような要素はない。威名馳せる人物なのかもしれない。生業は賞金首狩りの様なので、人殺しとして。久保田と引換所の主のやり取りを見ながら時任はそう考えた。
 久保田が宿に戻る気配はなく、それどころかその足で町を出ようとしている。周囲は既に家屋も疎らで、道と曠野の境界も曖昧中、僅かな月明かりを頼りに歩を進める。微光に照る場所だけが仄かに青白く、他は墨で塗り潰した如くだ。時は夜明けも近いような夜半。
 夜明け前が最も暗い。次の町へと続く荒野には乾いた大地と僅かな植物の他、何もない。砂に消され足跡すらも残らない道を歩いて行こうというのだろうか。
 それまで黙って付随っていた時任は、その背に問いを投げ掛けた。
「宿は?」
 久保田は立ち止まって彼の奴隷を振り返った。
己の換えの黒い外衣を着せた時任は、全身黒闇に溶け込んだ様で、目深に被った外衣の隙間から覗く肌だけがぼうと仄白い。時任も歩みを止める。
「まさかこのまま行く気じゃねぇよな。馬車もなしに」
 奴隷らしからぬ気随な言様の時任を久保田は注意深く観察した。不躾な口調は彼の立場からすれば考えられぬものだ。そこだけ切り取れば凡そ奴隷らしからぬといえよう。
 だが、時任は久保田の隣に並ぶ気配はない。三歩下がった距離で久保田の答えを待っている。元の通り背を向け、久保田は歩き出す。背後の気配は着いて来るようだった。
「せめて馬とか駱駝とか。丸一日歩き通しとか冗談じゃねぇよ」
 悪態混じり要求と、対照的な随順。久保田は気付いた。これは虚飾の気随だ。
恐らく、我儘を言うように、躾けられて居るのだろう。態と我儘を言わせ、時にそれを聞いてやり、時にそれを叱咤する。飼猫の相手をするように。世の中にはそういう趣向の人間もいないではない。故に、彼の言葉は本心を含まぬ放言の筈だ。
しかしそれでいて、どこか素の我を見せるところに久保田は興味を惹かれた。
矢張り面白い。久保田の口角が上がる。飼猫よりも野良猫の方がずっと興趣が尽きぬ。皮を剥いだ下に潜むは猫か虎か、手に負えぬ化け物か。
だからこそ時任が、逃亡の素振りを見せないことが久保田には意想外だった。
 背を向けたまま久保田は時任に答えた。
「次の仕事までは間があるし、暫くは節約しないとね」
 腰の革袋を軽く叩く。膨らみも重さも以前の倍以上だが、価値は比較にもならない。
「小物だったからなぁ。もっと大物の首があればよかったんだけど」
「……お前、金持ちなんだよな?」
 久保田の物言いに、時任は訝しげな表情を浮かべる。その気配を読み取って、また歩みを止め久保田は革袋を差し出した。一瞬の躊躇の後、時任はそれを受け取る。中を見るように促され、革紐を解き覗き込む。月色に照る銀の光。
「元ね。今はこれが全財産」
「……はぁ?」
 時任は唖然とする。
 久保田が差し出した革袋の銀貨は、先程賞金首との引き換えに得た物だ。つまり、時任と引き換えに渡したあの金剛石はあの時点での久保田の全財産だったということだ。
「なんでッ!」
 理解の範疇を超えた久保田の行動に時任は我を忘れ、食って掛かる。道楽や一瞬の衝迫としては法外な代価だ。冗談であればいい。しかし本気であるのなら。
「路銀さえ足りればね。別に欲しいものもなかったし」
 久保田の言葉は冗談とも本気とも判別付かなかった。何も感じない。金面への執着も、何も。
「……欲しいもん何て色々あるだろ」
 久保田に革袋を突き返し、時任は口を尖らせる。
「例えば?」
「美味い食い物とか、面白いもんとか、格好いい武器とか」
自由とか。
「んー」
「ないのかよ……」
 久保田は明確な答えを口にはせず、時任を見た。
 欲しい物等ない。必要ないと思い生きてきた。今もそう思っている筈だ。では、目の前のこれは何だ。
「確かに、何が欲しくなるか分かんないもんだねぇ。初めてだ」
 長い前髪の間から覗く硝子越しの瞳は、好奇を帯びて光り、枯渇に滑り、注視に冷たく、幾何かの執着を彼に向けている。
 冷たくもありながら熱ぽっさも感じる。居心地の悪い視線に身動ぎし、時任は困惑した。久保田が己に何を欲しているのかが分からない。しかし出来ることは限られている。
「してぇの?」
 顎を上げ、喉元の外衣をずらす。夜気に晒される白い首筋。
「なら今すぐすっきりさせてやるぜ? 場所、選ばねぇし」
 無論、久保田が場所を選ばぬことが前提ではあったが。
 久保田の表情に然したる変化は見られなかった。彼は一言こう言った。
「えっち」
「はぁッ?」
 意想外の言葉に頓狂な声を上げた時任に、久保田は先程から胸裏に抱いていた疑問を投げかける。
「ねぇ、何で逃げないの?」
売春窟を出て直ぐに手は放した。元より鎖は握っていない。しかし時任は従順に久保田の三歩後ろを着いてきた。
逃げたい、と彼が言ったら己はどうするのだろう。
逃がしたいという平明な意思が久保田に在る訳ではない。ただ、垣間見た身体能力から、時任が全力で駈走れば追付くのは容易ではないだろうと考えただけだ。加えて辺りは暗闇。逃亡には絶好の環境。
そもそも、逃げた猫を己は追うのだろうか。
「……」
初めて欲したのは事実だ。だが、そこまでの執着が己に存在することが信じられない。自身の衝動でさえ定かではない久保田の心中を、勿論時任は知る由もない。しかし、久保田の言葉が本気か否か等、時任には関係なかった。
「お前、奴隷のこと何も知らねぇのな」
浮かべたのは呆れの情。この奴隷は惜し気もなく躊躇いもなく実に色々な感情を表出して見せる。
右手で首の頸輪を指す。
「この首輪に鍵はない」
 華奢な首筋に嵌る、鍵穴のない武骨な鉄の輪。一度嵌めれば内部の凹凸が複雑に噛み合い、永劫その軛から解放されることはない。
「それに、この右手……」
拳を握る。黒い皮手袋の下には皮膚に刻まれた墨の紋様があった。通常、奴隷の主となった者は、自らの奴隷に刺青か焼鏝で所有の証を刻む。家畜と同様に。
首輪も文身も、生ある限り逃れられない隷属の符牒だ。
「お前殺して逃げたって、奴隷じゃなくなる訳じゃねぇんだよ」
「そっか」
「俺が生き延びる為に出来る唯一の事は、お前に抱かれることだけだ」
 抱かれる、そう言いながら外衣を脱ぎ払った手の動きは力強い。
生きる意志を見せる時、彼の瞳の奥は焔々と燃上がる。闇に慣れた目で直視などしたら焼き潰される、そんな光だ。
そっか。
久保田は得心した。
時任は生に拘泥している。何よりも生きる事を主眼に置いている。だから逃げなかった。
そして、だから惹かれた。
言葉を交わせば交わす程、知れば知る程、この奴隷と己は違う。生への執着は何よりも己に欠遺しているものだ。欠けているから欲しくなった。
久保田はそんな風に納得した。
 地平線が白み始める。黒が藍に変わる暁闇に転ずる。
 夜気に晒された肌は矢張り白く、艶めかしく、触れる掌と舌を待っている。
「やっぱえっちだね、お前」
「茶化すなよ」
「甘いなぁ」
 距離を詰める。久保田を見上げる顔に落ちる影。暁天を背に立っている為か暗く、間近でも不明瞭な面貌の中、時任を映す眼睛は夜明け前の暗晦より尚暗い。
「俺が自分の性欲解消する為だけにお前の事、買ったと思ってるの?」
ごくりと唾を飲み込む。
時任は自分の値を知っている。代価として積まれた金貨の山を知っている。久保田はその十倍を支払ったと言った。そしてそれは自分の全財産だと。
何の為に?
一通りの理不尽は経験してきた。だが、奈落の底のような目を見せるこの男が何を要求してくるのか、時任にも想像もできなかった。
「言ったでしょ、初めて欲しくなったものだって」
そう。抱かれるだけ、なんてそんな事を目の前の存在に求めた訳ではないのだ。何に対しても感興そそられぬ無味乾燥な生を貪ってきた己を、生きる意志、炎の様な強さのそれのみで惹き付けた存在に求めていることはもっとずっと沢山ある。
最初の要求は。
「先ずは、隣を歩いて欲しいかな」
 ぱちり、ぱちりと何度も瞬きをする。拍子抜けしたように肩を下げた時任の表情が緩み、口から力のない悪態が漏れる。
「……ばーか」
暁紅く、陽光、空を白々と染め始める。
「変な奴ッ!」
時任が初めて見せた笑顔は、燃える暁の赤光に炙られ生娘の恥じらいの様に驚くほど初心な表情に見えた。
心臓が震える。
今まで己の搏動すら曖昧模糊たる白昼夢の中を生きてきたのに、鮮烈な赤に文字通り目が覚める思いがした。
「酷いなぁ」
頬を撫でる。手を下に滑らせて首筋を、鎖骨を、胸元を、現実の膚触を確かめるかの様に触れる。薄布の上から、己が所有だという体を大きく乾いた掌でゆっくりとなぞった。
 擽ったそうに身を捩り、時任は纏っている紅い絹衣を掴んで言った。
「なぁ……この服、売れば?」
「なんで?」
「足りねぇんだろ、路銀」
「似合ってるのに? それ。勿体ないやねぇ」
 幾多の宝石が縫い付けられ金糸が燦然と眩い緋の衣は、時任が富貴なる者を対象とした夜伽の道具で、それ相応の装いを必要とされたことを物語っていた。
「どの道、こんな恰好じゃ旅なんてできねぇじゃん」
 悪戯っぽく時任は続ける。
「これからずっと、歩いて行くんだろ」
 隣を。

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「九時五十分……」

久保田探偵が時計を見て、そう呟きます。

二十面相の予告時間まで後十分足らず。

閉めた窓の前に警官が二人。バルコニーにも二人。二つの階段にそれぞれ四人。階下にも幾多の警官が己の持ち場を守り、蟻さえ見逃さぬ警戒です。

美術館の上空には警察のヘリまで出動し、一台が旋回しながら怪盗を警戒していました。

『泣かない未明』が収まったケースの前には久保田探偵、その助手、葛西さん、新木さん、館長さんが油断なく目を光らせています。

探偵はいつもののほほんとした雰囲気でしたが、探偵以外はぴりぴりと神経を尖らせています。

数時間前まで己が美術館の防犯設備に自信満々だった館長さんでさえ、冷や汗をその薄い額に浮べているのでした。

怪盗二十面相。

どんなに不可能な状況からでも魔術のように鮮やかな手口で御宝を奪い去る、稀代の大怪盗。

彼は予告した時間を違えたことはありません。

 

十時。

 

その場にいる全員に緊張が走ります。

カチ、カチ、カチ、カチ……

秒針が規則正しく時間を刻む音だけがその場に響きます。

十時、一秒……二秒……三秒……

針が進んでも怪盗は現れません。

誰かがほっと安堵の溜息を吐き出しました。

その時。

カッと閃光が走りました。

その場にいた誰もが眩しさに一瞬、目を固く閉じてしまいます。

その一瞬。一瞬です。

次に目を開けた時にはもう、『泣かない未明』は忽然と姿を消していました。

新木さんが叫びました。

「き、消えたッ!!?」

部屋のあらゆる場所から照明が一点に集中し、光の中心にあるガラスケースの中は空っぽです。

「そ、そんなッ!」

館長さんは転がるようにしてガラスケースに駆け寄るとポケットの中から自動車の鍵のようなものを取り出し、それに付いていた小さなボタン――多分、防犯装置の解除ボタンでしょう――を押しました。

そして目を庇いながら震える手で鍵を指し込んでガラスケースの蓋を開け、悲鳴を上げるように叫びました。

「な……ない!未明がないッ!」

悲鳴と同時に、室内の照明が一斉に消えて真っ暗になります。

ガシャン――ッ!

耳障りな音が響き、ステンドグラスが粉々に砕けました。

振り仰ぐと黒々としたシルエットが月明かりに浮び上がります。

「二十面相だッ!」

直ぐに警察の強烈な光線に地上から照らされ、ワイヤーらしきものにぶら下がった二十面相が姿を現しました。

特徴的な黒いマント、ニヤリと不気味に笑う無機質な仮面、そして左手に抱えているのは『泣かない未明』です!

怪盗は探偵を見て笑うと(仮面を着けているためあくまでも雰囲気ですが)ぶら下がったままヘリで悠々空を飛び去ってしまいました。

「あれは警察のヘリじゃねぇかッ!!」

「葛西さん!警視庁から連絡がッ!!ヘリ置き場で搭乗予定だったパイロットや刑事が全員縛られているのを発見したそうです!ヘリが一台、二十面相に乗っ取られましたッ!」

「遅ぇってーんだバカヤロウッ!!」

葛西さんがぎりりと歯軋りします。

他の古参の刑事さんも怒りで顔を真っ赤にして、新木さんに怒鳴りました。

「警視庁に連絡して大急ぎであのヘリの追跡をさせろッ!地上からもパトカーで可能な限り追うんだッ!」

警察のヘリで逃亡なんて、何とも警察への皮肉と侮蔑に満ちた所業ではありませんか。

警察の面子は丸潰れです。

刑事さんも警官もいきり立って、現場は上へ下への大騒ぎです。

その場の混乱を収めたのは一発の銃声でした。

――ドンッ!

「はーいみなさん落ちついて下さーい」

拳銃を天井に向けてぶっ放した久保田探偵は、呆れかえった顔の葛西さんに拳銃を返して唖然とした一同を見まわし、軽い口調ではっきりと言い放ちました。

「『泣かない未明』も犯人もまだこの場ですよ」

「二十面相はソコからヘリで逃げたろうッ!君も見たじゃないかッ!」

そう抗議したのは新木さんです。

そうだそうだと同調する刑事さん達を手で制して、探偵はステンドグラスの割れた窓の下に歩んで行き、しゃがみ込みました。

「この破片見てよ。殆どが室内に落ちてるっしょ。おかしいと思わない?二十面相がこの部屋の中から窓を割って逃げ出したなら、破片は部屋の外に落ちる筈だ」

「じゃ、じゃあアレはなんだったんだ!?」

「フェイクっしょ。多分、ヘリをジャックした二十面相の部下が二十面相に変装して偽物の『泣かない未明』を抱え、ヘリからぶら下がり外から窓をぶち割った。そうしていかにも二十面相が窓から逃げたように偽装したんじゃない?」

動揺する現場。

「何の為に!?」

「警察の注意を内部から逸らすためでしょ。犯人が逃走する姿を目視すれば警察は全力で追うだろうけど、ブツだけ消えてて犯人が逃げた痕跡がなきゃ、警察はここにいる人間を疑う。二十面相はそれを避けようとしたってワケ」

「あ……」

パキリ……足で踏みつけられたステンドグラスの破片が固い音を立てて割れます。

立ち上がって再びガラスケースの前に立った久保田探偵は、ある人物を見つめます。

「となれば、考えられるのは、二十面相はこの中にいるってことだ」

 

「ねぇ真田さん。……怪盗二十面相って言った方がいいかな」

 

貫くような鋭い視線の先にいる人物。

その場にいる全員がその人物を見て、驚きの声を上げます。

幾多の視線に晒されて――館長さんは目を見開いて後退りました。

「な……何を言って」

「お互い無駄な労力割くのは止めません?それでもまだ足掻くつもりなら、遠慮なく顔のマスク剥ぎ取らせてもらいますけど」

「……」

久保田探偵と館長が静かに睨み合います。

無言のやり取りが数秒間続いた後、館長がフッ……と微笑みました。

心なしか表情が精悍なものに変わり、背後に薔薇が出現しました。

声も一転して渋くダンディに変わります。

「流石だよ久保田君。それでこそ私の見込んだ男だ」

もう誤魔化すことなく怪盗二十面相は久保田探偵を手放しで賞賛しました。

「……いつ、私だと分かった?」

「最初から」

そうです。探偵は一度も館長さんのことを『館長さん』とは呼んでいなかったのでした。

「最初は確信があったワケじゃないんですけどね。ただ、俺が変装の名人だとして、警察が周りを取り囲んでいる最新の防犯設備の施設から予告時間にお宝盗むとしたら、誰に変装するのが有利か?って考えたら、そりゃ館長さんっしょ。

で、相浦に調べてもらったら、予告状が出される数日前に一日だけ館長さんの行方が曖昧な日があった。

何時も決まった時間に帰ってくる旦那さんがその日に限って何の連絡もなしに家へ帰ってこなかったって。

奥さんはすーごく心配してたのに、翌日の朝ケロッとした顔で帰ってきて、何をしていたのかもはぐらかした……

という奥さんの証言もあった。ちゃんと帰ってきたし、その後も普段通りだったから奥さんは警察にもその事は言わなかったみたいだけど、明らかに怪しいっしょ。入れ替わりが行われた可能性は十分だなーっと」

「おい、『泣かない未明』は何処に隠し持ってやがるんだ?一体」

慌てて葛西さんが口を挟みました。

泣かない未明は大玉のスイカ半分程度の大きさで、純白金のそれは決して懐に入れて隠しておけるような質量ではありません。

館長の扮装をした二十面相は一見してそんな大きなものを持っているようには見えませんでした。

「腹の中でしょ」

「飲んだのか!?」

「まさか。真田さんの腹は本物の館長さんと違ってあんなでっぷり出てないじゃない。中が空洞の張りぼてになっていてソコに隠してるんじゃないんですかねぇ。真田さん、ちょっと出してみてもらえます?」

二十面相は観念したのか、それでも雰囲気だけは余裕たっぷりに懐からナイフを取り出して自らの腹を縦に裂きました。

勿論、血の一滴も出ることはなく、手をつっこんで中から取り出したのは紛れもなく『泣かない未明』でした。

驚愕と感嘆に湧く現場。

しかし、そこに水を差すように怪盗は不吉なことを言い放ちました。

「忘れてはいないかな?私が盗むと予告したのは『泣かない未明』と『時任君』だ。今頃、私の部下が君の事務所に押し入って時任君を盗み出しているはずだよ」

怪盗にしてみれば久保田探偵に打撃を与えるとっておきの一言……の筈でした。

しかし、それを聞いても久保田探偵は慌てることなく不思議な微笑を浮かべています。

その時、館長さん……いえ、二十面相の上着ポケットが細かく振動しました。

「失礼」

と言って、携帯に出る二十面相。

二言、三言の短いやり取りの後通話を切って、なんとも言えない視線を久保田探偵に向けます。

「部下から連絡があった。……時任君が事務所にも何処にもいないそうだが、一体何処に隠したのかね?」

「何処も何もここにいますよ」

久保田探偵は隣にいるにゃんこな探偵助手の頭を撫でて、

「怪盗二十面相ともあろう人が、目の前の変装を見破れないなんて、ねぇ。ここにいる可愛い女の子は俺の敏腕助手時任君です」

「可愛いゆうな!」

むっとした顔で探偵を睨んで、頭上の手をばしっと叩きます。

目深に被っていたにゃんこ帽子を引き上げ、ついでにセミロングのかつらもずるりと脱ぎました。

なんと、久保田探偵は時任少年と桂木ちゃんを交換したように見せかけて、実は時任少年を女の子に化けさせていただけだったのです。

敵の裏の裏をかいた見事な作戦のように思えますが、しかし、怪盗二十面相と時任少年が顔見知りである以上、二十面相に変装が見破られる可能性はかなり高かったでしょう。

探偵が単に趣味に走った結果かもしれません。

そして探偵に『時任少年を傍から離す』という選択肢はないのでした。

「ふふふ……まいったよ。確かに君のことは意識の外に置いていた。迂闊だったな」

怪盗は愉快そうに笑って、探偵と助手の二人を見比べます。

怪盗と探偵の会話をじりじりしながら聞いていた葛西さんですが、久保田探偵が他に何も語ろうとしないのを見て、ついに口を出しました。

「誠人……いかにも一件落着、みたいな顔をしてるがな……『泣かない未明』がケースから一瞬で消えたトリックはどーなってんだ?」

「……説明しなくても犯人は逮捕できるっしょ」

探偵は宿敵を目の前にしても相変わらずやる気がありません。

「そーはいかねぇよ。こちとら調書を細かーく書かなきゃなんねぇんだ。めんどくさがってねぇでさっさと説明しやがれ」

「しょーがないなぁ」

久保田探偵は溜息を一つ吐くと、すぐ傍にある『泣かない未明』が収められていた蓋の開いた台の上に、懐から取り出したセブンスターの箱を置きました。

「時任、ヨロシク」

それだけの言葉でしたが、久保田探偵の優秀な助手である時任少年には何が言いたいのか分かったようです。

久保田探偵に向かって頷くと、階段を下りて二階へ走って行きました。

間もなく、先程と同じように眩いライトの光が四方から当たり、皆が眩しさに目を瞑った一瞬の内にセブンスターの姿は魔法のように消え去ってしまいました。

「消えたッ!?」

しかし直ぐにライトの光は消えて、台の上には元のようにセブンスターの箱が鎮座しています。

「ど……どうなってるんだ……」

「人間ってさ、暗いと見えないのは当たり前だけど、逆に明るすぎても見えないんだよねぇ。それを利用したトリック」

戻って来た時任少年の頭をいい子いい子するように撫でて、久保田探偵は説明を続けます。

「大方、防犯の為だとかいって誤魔化して改装した際に、こっそりこの部屋にだけ照明器具を多く付けたんでしょ。元々、この美術館って窓がないから照明器具が多い造りだしね。

まぁ流れとしては、持ってたスイッチかなんかで照明を付けて、『泣かない未明』が消えたように見せかける。そして動揺したふりをしてガラスケースを開ける。

解除スイッチ持ってるのが犯人なんだから折角の電流の罠も意味ないよねぇ。で、照明が消えた隙に張りぼての腹の中に未明を隠す。

後は派手に現れた二十面相のダミーに、他の人と一緒に気ぃ取られていればよかったワケ。俺にさえ疑われなかったら、そのまま館長として堂々と犯行現場から離れられていた」

「これだけの謎解きを一瞬で……」

久保田探偵の鮮やかな謎解きに、その場にいる者は皆、言葉もなくただただ感嘆の溜息を吐き出します。

葛西さんだけは冷静に、

「さて、全ての謎が解けたトコで署まで同行してもらおうか、真田」

銃を突き付けながら、手錠を手にして怪盗ににじり寄ります。

対する怪盗も不敵な笑みを浮かべたまま、

「悪いが、まだこんな所で捕まるわけにはいかないのでね」

いきなり手榴弾のようなものを床に投げつけました。

炸裂音と共に部屋の中は白い煙に包まれます。

「ッ!!?」

「毒ガスかッ!?」

視界は白く閉ざされ一寸先も見えず、息苦しさに咳が止まりません。

皆、げほげほと咳き込みながら煙から逃れようとパニックを起こしています。

素早く冷静に時任少年と自分の口を布で覆った久保田探偵は、見えない中で、

「また会おう、久保田君」

という怪盗の声を聞いたように思いました。

煙が室内を覆っていた時間はそう長くありませんでした。

ステンドグラスの割れた箇所から外気が流れ込み、段々と視界を取り戻していきます。

そこにはやはり、怪盗の姿はなかったのでした。

「あーあ。やっぱり逃げられた」

「他人事みたいな顔すんなよ久保ちゃん……」

「だって、毎回このパターンで逃げられてるじゃない?」

呆れたような探偵助手とやる気のない探偵は顔を見合わせます。

「おいッ!!『泣かない未明』は!?」

「ここ」

葛西さんの怒鳴り声に、探偵は足元を指しました。

そこにはちょこんと『泣かない未明』が置かれていました。何故か薔薇の花が一本添えられています。

探偵への贈り物でしょうか?

しかしそれを無視すると、

「こんなかさばるの持ってたら逃げらんないからねぇ……逮捕は警察に任せたよ?」

「おぉ」

葛西さん達は何処かに連絡を取りながら慌しく出て行き、『泣かない未明』も警察関係者によって保護ケースに収められて何処かに運ばれていきます。

残った探偵は、時任少年の顔を見下ろすとおどけたように言いました。

「時任も守ったし国宝も盗まれなかったし、これにて一件落着……と」

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